定年退職した場合に失業保険を受け取れる条件、種類や手続きの方法

 

失業保険といえば「現役世代が離職したときにお金をもらえる保険」というイメージがあり、定年退職した人には適用されないと思われているケースもよくあります。

 

実は定年退職者でも失業保険を受け取れるケースが多いので、ぜひ知っておきましょう。

 

今回は定年退職者が失業保険を受け取れる条件や、年齢によって異なる給付金の種類、失業保険を受け取るための手続き申請方法について、解説します。

 

1.定年退職でも失業保険を受け取れる

定年退職した方は、失業保険を受け取れないと考えているかもしれません。しかし失業保険はいわゆる現役世代だけのものではなく、高齢者も支給対象となっています。

 

今、日本では少子高齢化が急速に進んでおり、アクティブなシニア層も増加しています。60歳、65歳で定年を迎えても、再雇用やアルバイトなどではたらきたい方も多いでしょう。

 

失業保険(雇用保険)ははたらく意思と能力があり、現実に求職する労働者へ適用される保険です。高齢者でもその条件を満たすなら、失業保険を受け取る権利を認められます。

 

2.定年退職は自己都合か会社都合か

失業保険が支給されるとき「会社都合退職」か「自己都合退職」かで大きく取扱いが変わります。

2-1.会社都合退職

会社都合退職は、解雇やリストラ、倒産などの「会社側の事情」による退職です。会社都合退職の方が失業保険を申請すると「給付制限期間」が適用されません。給付制限期間とは、失業保険の給付を3か月間制限されることです。会社都合退職の場合には失業者が生活に困る可能性が高いので、給付制限なしにすぐに失業保険を受け取れます。

また給付日数も自己都合退職の場合より長くなり、総支給額も高額になります。

 

2-2.自己都合退職

自己都合退職は、転職目的やキャリアアップ、ゆっくり休みたいなど「労働者側の事情」による退職です。

自己都合退職の方が失業保険を申請すると「3か月の給付制限期間」が適用されます。失業保険の申請後、3か月と7日間は失業保険を受け取れません。その間は自力で生活する必要があります。

 

会社都合退職より失業保険の受給期間が短くなり、総支給額も下がります。

 

会社都合退職と自己都合退職を比べると、明らかに会社都合退職の方が得になります。

 

2-3.定年退職の場合

定年退職の場合、会社都合退職か自己都合退職のどちらになるのでしょうか?

 

実は「退職した年齢」や「会社に継続雇用制度があるかどうか」で異なってきます。現在「高年齢者雇用安定法」という法律により、事業者には「定年を65歳以上にする」か「65歳までの継続雇用制度を導入する」か、どちらかの措置をとるよう求められています。

 

定年が65歳以上になっている会社の場合、定年まで勤め上げて退職すると「自己都合退職」になります。定年になったのは労働者側の事情であり、会社の都合で辞めさせられたことにはならないからです。

 

一方、定年が65歳未満の会社の場合、「継続雇用制度」が導入されているかどうかで扱いが異なってきます。

継続雇用制度が導入されているにもかかわらず、それを利用せずに退職したなら「自己都合退職」です。一方、継続雇用制度が用意されていないのでやむなく65歳未満で退職した場合、会社側の事情によって退職したといえるので「会社都合退職」となります。

 

定年退職で会社都合退職になるケースと自己都合退職になるケースをまとめると、以下のとおりです。

 

会社都合退職になるケース

  • 継続雇用制度が導入されていないので65歳未満でやむなく退職した

 

自己都合退職になるケース

  • 65歳以上で定年退職した
  • 継続雇用制度が導入されているが利用せず、65歳未満で退職した

 

3.定年退職者の失業保険は年齢によって異なる

定年退職者の場合、年齢によって受け取れる失業保険の「種類」が異なります。

 

3-1.65歳未満の場合

世間一般で「失業保険」と呼ばれている給付金は「雇用保険の基本手当」です。雇用保険の基本手当が支給されるのは「65歳までの労働者」なので、64歳までに辞めたら通常の失業保険を受け取れます。

 

3-2.65歳以上の場合

定年退職時に65歳以上になっていたら、基本手当(一般的な失業保険)は受け取れません。

ただし雇用保険では、65歳以上でもはたらく意欲と能力のある人のために「高年齢求職者給付金」という手当が用意されています。高年齢求職者給付金は通常の失業保険とは異なり「一括支給」であり、金額もかなり少なくなるなど、基本手当とは大きな違いがあります。

 

65歳以上で定年退職した方が雇用保険受給の条件を満たせば「高年齢求職者給付金」を受け取れます。

 

 

定年退職者が受け取れる年齢別の失業保険をまとめると、以下のとおりです。

  • 65歳未満の方…通常の失業保険(雇用保険の基本手当)
  • 65歳以上の方…高年齢求職者給付金

 

4.基本手当と高年齢求職者給付金の違い

基本手当と高年齢求職者給付金を比較するとどのような点に違いがあるのでしょうか?

表で比較してみましょう。

 

基本手当 高年齢求職者給付金
年齢 64歳まで 65歳以上
支給日数 90~330日 30日または50日
支給方法 28日ごとの分割払い 一括払い
年金との併用 不可
3か月の給付制限期間 自己都合退職の場合、制限される 制限されない
雇用保険への加入期間 自己都合退職の場合「離職前2年間に12か月以上」

会社都合退職の場合「離職前1年間に6か月以上」

離職前に6か月以上

 

それぞれについてみていきましょう。

4-1.年齢

雇用保険の基本手当が支給されるのは、64歳までの労働者です。

高年齢求職者給付金は65歳以上の労働者へ支給されます。

4-2.支給日数

基本手当の場合、支給日数は以下のとおりです。

 

会社都合退職の場合

加入期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日間 90日 120日 180日
30歳以上
35歳未満
120日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
150日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
150日 180日 210日 240日

 

自己都合退職の場合

雇用保険加入年数 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
なし 90日 90日 120日 150日

 

 

高年齢求職者給付金の場合、基本手当日額の30日分または50日分となります。

雇用保険加入年数 1年未満 1年以上
支給日数 30日分 50日分

 

4-3.支給方法

雇用保険の基本手当の支給は分割払いです。待機期間や給付制限期間の終了後、28日に1回支給されます。再就職したら、その後の分は支給されません。

 

高年齢求職者給付金は一括払いされます。待機期間終了後、30日分または50日分が一括で振り込まれます。

 

4-4.年金との併用

雇用保険の基本手当は年金と併用できません。年金を受け取っている方が失業保険を受給すると、受給期間中の年金を止められます。

 

高年齢求職者給付金は年金と併用可能です。

 

4-5.3か月の給付制限期間

雇用保険の基本手当の場合、自己都合退職の方には「給付制限期間」が適用されるので、実際に失業保険を受給できるのは「失業保険の申請後、3か月と7日経過後」となります。会社都合退職の場合、給付制限はなく7日間の待機期間を過ぎれば受給できます。

 

高年齢求職者給付金の場合にも、給付制限期間が適用されません。7日間の待機期間を過ぎれば一括で受給できます。

 

4-6.雇用保険への加入期間

基本手当と高年齢求職者給付金では、雇用保険への加入期間の要件も異なります。

 

基本手当の場合、会社都合退職なら「離職前1年間に6か月以上の雇用保険加入期間」が必要です。自己都合退職なら「離職前2年間に12か月以上の雇用保険加入期間」が要件となります。

 

高年齢求職者給付金の場合「離職前の1年間に6か月以上雇用保険に加入」していれば、受給資格を満たします。

 

5.何歳で定年退職するのが得になるのか?

以上のように、雇用保険では65歳になってから定年退職するのか64歳までに退職するのかで、大きく取扱いが異なります。

定年退職する年齢を迷ったとき、どちらを選択するのが得になるのでしょうか?

 

5-1.64歳までに退職するメリット

両者を比べると、64歳まで受け取れる「基本手当」の方が支給日数は長くなるので、総額としては大きな金額を受け取れます。よって失業保険の総支給額だけを考えると、64歳までに退職した方が得に思えます。

 

5-2.64歳までに退職するデメリット

64歳までに自主的に退職したり継続雇用制度を利用せずにあえて退職したりすると、「自己都合退職」になります。給付制限期間が適用されて失業保険なしに3か月生活しなければなりません。また失業保険は28日ごとに支給されるので、早期に再就職したらその後は受け取れず、結局大きな金額を受給できません。

 

さらに早期退職すると、退職金を減らされる可能性もあります。多くの会社では「定年退職」と「自己都合退職」で退職金支給額を分けており、定年前の自己都合退職の場合には定年退職に比べて大幅に減額されるからです。

 

継続雇用制度がある会社で、あえて64歳までに退職すると「自己都合退職」となるのでデメリットが大きくなります。

特に退職金に差額が発生する場合、定年まで勤め上げた方が得になるケースが多いので、失業保険の受給期間だけに注目して安易に早期退職を選択しないように注意しましょう。

 

 

6.定年退職で失業保険を受け取る条件

定年退職した方が失業保険を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。

 

6-1.64歳までの方

  • 就職の意思と能力がある
  • 実際に求職活動を行っている
  • 雇用保険の加入期間が足りている

 

64歳までの方が「雇用保険の基本手当」を受給するには、上記の3つの要件を満たさねばなりません。基本手当は28日ごとに「失業の認定」を受けると支給されます。失業の認定を受けるには、求職活動の実績を示す必要があるので、受給期間中は継続的に求職活動を行う必要があります。

雇用保険の加入期間の要件は、自己都合退職の方の場合には「離職前2年間に12か月以上」、会社都合退職の方の場合には「離職前1年間に6か月以上」となります。

 

6-2.65歳以上の方

  • 就職の意思と能力がある
  • 離職前の1年に6か月以上の雇用保険加入期間がある

 

65歳以上の方が失業保険の高年齢求職者給付金を受け取るには、上記の条件を満たせば足ります。1回は「失業の認定」を受ける必要がありますが、すぐに一時金が振り込まれるので、その後継続的に求職活動を行う必要はありません。

 

7.定年退職後、失業保険を申請する場合の注意点

定年退職後、失業保険(高年齢求職者給付金を含む)を申請する際には「期間制限」に注意が必要です。

雇用保険からの各種手当ての給付期間は「離職後1年間」に限定されているからです。定年退職後、「ちょっとゆっくりしよう」と思って何もせずに3か月、4か月を経過していくと失業保険を受け取れる期間をどんどん減らされ、1年を過ぎると申請自体が認められなくなります。

 

ただし、定年退職者の場合には雇用保険の給付期間を1年間延長できます。受給期間の延長手続は、離職後2か月以内に行う必要があります。定年退職後、すぐにはたらく気がしないなら、早めにハローワークへいって失業保険の延長申請をしましょう。

 

8.定年退職後、失業保険を申請する流れ

  • 離職票と雇用保険被保険者証を受け取る

退職した会社から離職票と雇用保険被保険者証を送ってもらいます。

  • ハローワークで申請をする

離職票と雇用保険被保険者証、本人確認書類、通帳等を持参してハローワークへ行き、雇用保険を申請し、求職の申込みを行います。

  • 説明会に参加する

雇用保険の説明会に参加し、雇用保険受給資格者証を受け取ります。

  • 失業の認定を受ける

就職活動の実績を示して失業の認定を受けます。

  • 待機期間終了後に雇用保険が振り込まれる(自己都合退職の場合、3か月の給付制限期間経過後)

7日の待機期間が過ぎると、基本手当(会社都合退職の場合)や高年齢求職者給付金が支給されます。自己都合退職の場合、さらに3か月の給付制限期間経過後に振り込まれます。

 

9.定年退職後の失業保険申請に不安のある方へ

定年退職後でも失業保険を受け取れるので、資格を満たす方は申請しましょう。方法がわからなければ当社からアドバイスとサポートをさせていただきますので、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

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