失業保険受給中は扶養に入れない?ケースごとの選択方法や上手な切り替え方法を解説

 

失業保険を受給していても、配偶者の扶養に入れるのでしょうか?

扶養に入ると配偶者の健康保険や年金を適用できるので、別途健康保険料や年金保険料を支払う必要がありません。家計も助かるでしょう。

 

ただ現実には失業保険受給中に扶養に入るのは困難なケースが多数です。扶養に入れるのは「失業保険を受け取っていない期間」に限られる方が多いでしょう。

 

今回は失業保険と扶養の基本的な関係、どちらを選択すべきか、退職後に失業保険と扶養を切り替えてお得に制度を活用する方法をご紹介します。退職して扶養に入ろうか失業保険を受け取ろうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

 

1.社会保険の扶養に入る条件

扶養とは、配偶者や親などの社会保険に入れてもらうことです。扶養に入ったら、その人は自分で健康保険に入る必要がないので、国民健康保険料を支払う必要がありません。国民年金保険料の支払いも免除されます。

 

ただし扶養に入るには、年収が一定以下でなければなりません。

具体的には「現在から将来にかけての1年間の見込み収入130万円まで」が限度です。月額でいうと「108,333円程度」が限度となっており、それを超える収入があると扶養から外されてしまいます。

 

2.失業保険を受け取っていると扶養には入れない

では失業保険を受け取っていても扶養に入れるのでしょうか?失業保険と扶養の関係をみていきましょう。

2-1.「収入」には失業保険が含まれる

社会保険の扶養に入る条件を判断するための「収入」には失業保険も含まれます。

失業保険を月額108,333円以上受け取る場合、健康保険へ加入できません。

 

108,333円を1か月の日数である30日で割り算すると、1日あたりの金額は3,612円程度となります。つまり失業保険の「基本手当日額」が3,612円以上になる場合には配偶者の扶養には入れないのです。

 

  • 基本手当日額…失業保険から給付される1日あたりの受給額

 

2-2.失業保険の金額は扶養の上限を超えるケースが多い

失業保険の給付金額は、失業者の年齢や在職時の賃金額によって異なるので、ここでは概算で計算します。すると基本手当日額が3,612円となるのは、だいたい月給136,000円くらいの場合です。

 

月給136,000円というと、高卒の初任給でも軽くオーバーしてしまう金額です。

令和元年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査結果(初任給)」によると、高卒初任給の男女の平均額は167,400円、男性の場合167,900円、女性の場合164,600円となっています。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html

高専、短大、大卒、大学院卒となるともっと金額が上がっていきます。

 

つまり、通常の正社員としてはたらいていた方が失業保険を受給する場合には、扶養の限度額を超えてしまうのです。

 

パートやアルバイトなどで月給が少なかった人を除けば、失業保険を受け取りながら扶養に入るのは困難といえるでしょう。

 

2-3.累計受給額が130万円未満でも失業保険を受け取れない

失業保険の日額が3,612円を超えていても、給付日数が少ないので累計額は130万円未満になるケースがあります。

たとえば失業保険の基本手当日額が5,000円で給付日数が90日の場合、支給総額は450,000円です。それであれば「年収130万円」を下回るので扶養に入れないのでしょうか?

 

これについては不可能です。扶養の「収入」はあくまで「見込み収入」を基準にするからです。

 

失業保険を受給する場合「近い将来就職する」ことが前提となっています。そもそも就職の意思と能力をもち、就職活動を継続しなければ失業保険を受給できません。

就職したら、失業保険額以上の収入を得るのが一般的です。扶養の収入を計算するときには、この「就職後に得られる収入」も見込み額として考慮するのです。

 

よって、失業保険からの給付総額が130万円未満であっても、受給後に就職して「収入を得る見込み」がある以上は扶養に入れません。

 

3.失業保険と扶養、どっちがお得?

失業保険の受給と扶養は「同時並行」できないので、どちらかを選ぶ必要があります。

どちらにメリットが大きいのでしょうか?

 

扶養と失業保険の経済的なメリットを比較してみましょう。

 

3-1.扶養に入る場合の金銭的なメリット

扶養に入ると、被扶養者は健康保険料と国民年金保険料を支払わずに済みます。

国民年金保険料は1か月16,540円(令和2年現在)、国民健康保険料の金額は人によって異なりますが、目安として月額1~2万円くらいになるでしょう。

扶養に入るとこれらの支払が不要となるので、合計すると1か月に3~4万円程度の節約になります。

 

3-2.失業保険の受給額

失業保険を受給すると、多くの場合に月額11万円以上は受け取れます。たとえば日額5,000円とすると月額15万円です。毎月11万円分以上の経済的メリットを得られます。

 

3-3.失業保険の方が得になる

扶養では月額3~4万円の節約にしかならないのに対し、失業保険を受給すると11万円以上受け取れる可能性が高くなります。両者を比べると、失業保険を受け取った方が得といえるでしょう。

 

失業保険の受給条件を満たしているなら、扶養に入らずに受給する方が大きなメリットを得られます。

 

4.失業保険を受給しても扶養に入れるタイミング

実は、失業保険を受給しても扶養に入れるタイミングがあります。

4-1.待機期間、給付制限期間は失業保険

失業保険を申請しても、すぐに受け取れるわけではありません。

最低7日間の「待機期間」を適用されます。この間に「本当に失業しているのか」を判定されます。

また自己都合退職の場合には、待機期間後にさらに3か月間の「給付制限期間」が適用されます。この3か月間は、失業保険なしに自力で生活しなければなりません。

 

  • 自己都合退職

転職やキャリアアップ、仕事が嫌になったなどの従業員の個人的な都合にもとづく退職

 

待機期間や給付制限期間には「見込み収入」がないので、扶養の「収入制限」にかかりません。ハローワークへ失業保険を申請した後も、その期間中であれば扶養に入れます。

 

ただし健康保険組合によっては給付制限期間中の扶養扱いが不可能な場合があるので、個別の確認は必要です。

また会社都合退職の場合には給付制限期間がなく「待機期間の7日間」が満了するとすぐに失業保険が支給されます。7日間だけ扶養に入るのは現実的ではないので、会社都合退職の場合には失業保険申請後に扶養に入るメリットが小さいと考えましょう。

 

4-2.失業保険の受給後

失業保険を受け取りながら就職活動をしても、良い就職先が見つからず就職できない可能性があります。

失業保険受給終了後にまだ就職できず無職であれば、その後の「見込み収入額」は0円です。扶養の条件を満たすので、配偶者の扶養に入れてもらえます。

 

以上のように、失業保険申請後の「3か月と7日間(会社都合退職の場合には7日間のみ)」、「失業保険の受給終了後」は扶養に入れます。失業保険と扶養をうまく切り替えてこれらの期間に扶養に入ると、失業保険と扶養の両方のメリットを得られます。

 

5.賢い失業保険と扶養の活用方法

退職後、失業保険を扶養は以下のように使い分けるのがお勧めです。

5-1.会社都合退職の場合

会社都合退職の場合、7日間の待機期間満了後すぐに失業保険を受け取れます。

まずは失業保険を申請し、手続きを進めて受給を開始しましょう。

失業保険の受給期間が終了したら、扶養に切り替えて配偶者の保険に入れば、健康保険料と年金保険料を節約できます。

 

5-2.自己都合退職の場合

自己都合退職の場合、待機期間後も3か月間の給付制限期間が適用され、その間は失業保険を受け取れません。そして給付制限期間中は配偶者の扶養に入れます。

 

退職後、まずは失業保険の申請に行きましょう。その後、3か月と7日間は無職となるので、配偶者の扶養に入れてもらいます。

その後、失業保険の受給を開始したら扶養を外れて給付金をもらいながら就職活動を行います。

失業保険の受給期間を終了したら、再度扶養に切り替えれば健康保険料と年金保険料を節約できます。

 

6.税制上の扶養と社会保険の扶養の違い

ここまでは「社会保険」における扶養について説明してきましたが、一般に「扶養」という場合「税制上の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があります。これらは異なる制度なので、正しく理解しておきましょう。

税制上の扶養とは、配偶者や子ども、親などを扶養している場合に税金の控除を受けられる制度です。「年収103万円以下の配偶者」がいれば、所得税を38万円分控除してもらえます。

 

税制上の扶養における「年収」には失業保険が含まれません。配偶者が失業保険を受け取っていても、税制上の配偶者控除が適用されて所得税が減額されます。

 

つまり社会保険の場合には、失業保険を受給していると「扶養」になりません。一方税制上は「扶養」扱いとなって配偶者控除を受けられます。この違いを押さえておきましょう。

 

7.退職後の失業保険申請と扶養への切り替えの流れと方法

最後に、自己都合退職の方が退職した後、失業保険と扶養を切り替える流れと方法を簡単にご紹介します。

 

7-1.退職後、扶養に入る手続きをする

退職したら健康保険に加入していない状態になるので、すぐに配偶者の扶養に入れてもらいましょう。配偶者が加入している健康保険組合に以下の2つの書類を提出すれば、扶養に入れてもらえます。

  • 扶養異動届

会社(健康保険組合)から書式をもらって作成しましょう。

  • 退職日がわかる資料

退職証明書、離職票などの書類です。

 

7-2.前の勤務先から離職票、雇用保険受給者証をもらう

次に以前の勤務先から離職票や雇用保険受給者証をもらいましょう。通常は退職後2週間程度で自宅に送られてきます。送られてこなければ以前の勤務先へ問い合わせてみてください。

7-3.ハローワークで失業保険の申請を行う

書類が届いたら、ハローワークへ行って失業保険の申請をします。求職の申込みも同時に行いましょう。

自己都合退職の場合、待機期間が終了して失業保険の受給が決定しても、3か月の給付制限期間が適用されます。その間は配偶者の扶養に入って過ごし、健康保険料や年金保険料を節約しましょう。

 

なお、この段階で就職活動をして就職を決めてもかまいません。

 

7-4.失業保険の受給を開始したら国民健康保険に入る

給付制限期間が終了して失業保険の受給を開始したら、配偶者の扶養から外れます。きちんと健康保険組合に報告しないと、後で知られてトラブルになるので必ず切り替えの手続きを行いましょう。

健康保険を切り替えるには、扶養で入っていた健康保険組合から資格喪失証明書をもらい、市町村役場へ持参して「国民健康保険」に加入します。その間は年金も「国民年金」になるので、国民年金保険料を払わねばなりません。納付用紙が届くので、期限内に支払いましょう。

 

7-5.失業保険の受給を終わったときに就職できていなければ再度扶養に入る

失業保険の受給期間を終了しても就職できていなければ、再度配偶者の扶養に入れます。配偶者の健康保険組合へ再度扶養異動届を提出し、扶養に入れてもらいましょう。

 

7-6.会社都合退職の場合

会社都合退職の方の場合、退職したらすぐに市町村役場に行って資格喪失証明書を提出し「国民健康保険」に入りましょう。

その後ハローワークで失業保険を申請し、受給しながら国民健康保険と国民年金の保険料を支払います。失業保険の受給が終了しても就職できていなければ、配偶者の加入している健康保険組合に連絡して扶養に入れてもらいましょう。

 

8.扶養か失業保険かで迷ったらご相談ください

多くの場合、扶養に入るより失業保険を受け取った方が得になりますが、例外もあります。

迷ったときには社会保険の専門会社を活用しましょう。

当社では多数の方の失業保険受給をサポートしてきた実績があり、ご相談いただけましたら扶養か失業保険かという観点をふまえて最善の方法をご提案させていただきます。手続き方法もご案内いたしますので、迷ったときにはまずは1度、ご相談ください。

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