傷病手当金と失業保険は両方もらえる?同時受給の可否と正しい切り替え手順を解説

「傷病手当金」「失業保険(基本手当)」は、同時に受け取ることはできません。

ただし、条件を満たせば“順番に”両方受給することは可能です。

本記事では、まず両制度の仕組みの違いを整理したうえで、なぜ同時受給ができないのか、
どのような流れであれば順番に受給できるのか、そして切り替え時に注意すべきポイントまで、
実務ベースでわかりやすく解説します。

失業保険の仕組みや申請の流れ、受給条件を基礎から確認したい方は、
まずこちらの記事をご覧ください。

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育子(元ハローワーク職員)
執筆者
育子(元ハローワーク職員)
ハローワークの窓口で10年以上、数千件に及ぶ相談・審査業務を担当。制度の複雑さや情報の少なさが原因で、自分に合った選択肢や権利を逃してしまう方を大勢見てきました。現場を知り尽くした元職員の視点から、公的制度の正しい活用法や、後悔しないための働き方のヒントとなるような情報を、実務経験に基づき分かりやすくお伝えします。
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傷病手当金と失業保険は同時にもらえる?

結論から言うと、同時受給はできません。

なぜなら、両制度は前提となる状態が正反対だからです。

傷病手当金は、病気やけがにより労務不能であることが支給要件です。
一方、失業保険は、就職の意思と能力があり、いつでも働ける状態であることが前提になります。

つまり、

  • 働けない状態 → 傷病手当金
  • 働ける状態 → 失業保険

という制度設計になっているため、同じ期間に両方を受け取ることは制度上できません。

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両制度を順番に活用する方法

同時は不可ですが、順番に受給することは可能です。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 病気療養中は傷病手当を受給する
    医師から労務不能と判断されている間は、傷病手当金を受給します。
    この期間は働けない状態が前提です。
  2. 受給期間延長の手続きをしておく
    失業保険の受給資格を失わないために、ハローワークで「受給期間延長申請」を行います。
    (退職日の翌日から31日経過後が目安です)
  3. 体調が回復し就職可能になったら失業保険へ切り替える
    医師から就労可能と判断されたら、ハローワークで失業保険の手続きを行います。
    ここからは働ける状態が前提になります。

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傷病手当金から失業保険への切り替え手順

傷病手当金から失業保険へ切り替えるには、正しい順番で手続きを進めることが重要です。

流れは次のとおりです。

  1. 傷病手当金を受給開始する
    退職前または退職直後に、医師から労務不能と診断された場合、傷病手当金の受給を開始します。
    この期間は働くことができない状態であることが前提です。
  2. ハローワークで受給期間延長申請を行う
    失業保険の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。
    療養中は求職活動ができないため、退職日の翌日から30日を経過した後に、ハローワークで受給期間延長申請を行います。
    延長が認められると、受給期間は最大3年間延長され、最長4年間まで保全できます。
    ※延長されるのは受給期間(期限)であり、所定給付日数が増えるわけではありません。
  3. 医師から就労可能の判断をもらう
    失業保険を受給するには、就職の意思と能力があることが必要です。
    そのため、体調が回復した段階で、主治医から就労可能と判断してもらいます。
  4. ハローワークで失業保険を申請する
    就労可能な状態になったら、ハローワークで求職申込みを行います。
    失業認定を受けることで、基本手当の支給が開始されます。

傷病手当金が終了した後の具体的な手続きや、失業保険へ切り替えた場合にいくら受け取れるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

傷病手当金が終わったらどうする?失業保険への切り替え方と金額を解説!

体調回復までの期間で考える制度の使い方

傷病手当金と失業保険のどちらを先に利用すべきかは、
療養がどのくらい続く見込みかによって判断が変わります。

療養が長期化する見込みの場合

体調回復までに時間がかかる見込みであれば、
まず傷病手当金を受給し、回復後に失業保険へ切り替えるのが一般的です。

傷病手当金は、支給開始日から最長1年6か月受給することができます。
療養が長引く可能性がある場合は、無理に失業保険を申請するのではなく、
まずは労務不能を前提とした傷病手当金を優先する方が制度趣旨にも合っています。

医師にどう伝える?傷病手当金申請書を通りやすくする方法|診断書の書き方?

短期間で回復する見込みの場合

比較的早い段階で就職活動が可能になる見込みであれば、最初から失業保険を申請するという選択肢もあります。

ただし、失業保険は就職の意思と能力があることが前提です。
医師の判断や体調の状況によっては、傷病手当金を先に受給すべきケースもあります。

どちらを選ぶべきかは、療養期間の見込みや収入状況、退職時の条件などによって異なります。
安易な自己判断で手続きを進めるのではなく、制度の要件を正しく確認したうえで判断することが重要です。

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傷病手当金と失業保険の支給額の違い

傷病手当金と失業保険は、支給額の計算方法が異なります
そのため、収入水準によってどちらが有利かが変わります。

  • 傷病手当金
    標準報酬月額(平均日給)の3分の2相当が1日分として支給されます。
    基本的に在職中の給与水準に比例するため、収入が高い人ほど受給額も高くなる傾向があります。

  • 失業保険
    賃金日額をもとに計算されますが、年齢区分ごとに日額の上限があります
    そのため、年収が高い場合は上限により受給額が抑えられることがあります。
    一方で、最低保障額があるため、月給約28万円以下の場合は傷病手当金よりも失業保険のほうが有利になります。

このように、どちらが有利かは賃金によって異なります。
単純にどちらがお得とは言い切れないため、自身の収入水準をもとに具体的に比較することが重要です。

退職後すぐにもらえる給付金まとめ|傷病手当金やハローワークでの手続き・必要書類を徹底解説

切り替え時の注意点

傷病手当金から失業保険へ切り替える際には、いくつか重要なポイントがあります。
ここを誤ると、受給できるはずの給付が受け取れなくなる可能性もあるため、必ず確認しておきましょう。

  • 傷病手当金受給中に受給期間延長申請を行うこと
    失業保険の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。
    療養中で求職活動ができない場合は、この期間を延長しておかなければ、後から失業保険を受け取れなくなる可能性があります。
  • 体調回復後、速やかに失業保険の申請を行うこと
    傷病手当金が終了してから手続きを先延ばしにすると、受給開始が遅れたり、空白期間が生じたりすることがあります。
    回復したタイミングで、できるだけ早くハローワークへ申請しましょう。
  • 就労可能な状態であることが前提であること
    失業保険は、働く意思と能力があることが受給条件です。
    主治医から就労可能と判断されていない場合は、基本手当は支給されません。

特に注意すべきなのが受給期間延長申請です。
これを忘れてしまうと、後から失業保険を受け取りたくても、受給資格そのものが失効してしまう可能性があります。

切り替えは体調と期限の両方を意識して進めることが重要です。

失業保険は診断書があればすぐもらえる?提出のタイミングと注意点まとめ

よくある質問(Q&A)

Q1. 傷病手当金を受け取ったら、失業保険はもらえませんか?
A. 同時に受け取ることはできませんが、順番に受給することは可能です。
療養中は傷病手当金を受給し、体調が回復して就職可能な状態になった後に、失業保険へ切り替える流れになります。
関連記事:傷病手当金と失業保険、どっちを先に受給すべき?数百万円変わる「正しい受給順序」を徹底比較

Q2. 受給期間延長申請を忘れたらどうなりますか?
A. 失業保険の受給期間は原則として退職日の翌日から1年間です。
療養中に延長申請を行わなかった場合、この期間を過ぎると失業保険を受け取れなくなる可能性があります。
傷病手当金を受給している場合は、必ず延長申請を行っておきましょう。
関連記事:失業保険の受給期限は延長できる!条件と方法について徹底解説

Q3. 傷病手当金の受給中にアルバイトはできますか?
A. 原則としてできません。
傷病手当金は労務不能であることが支給条件のため、働ける状態と判断されると支給停止になる可能性があります。
関連記事:傷病手当金受給中にバイトはバレる?手渡しや退職後の副業のリスクを徹底解説!

Q4. 失業保険へ切り替える際、診断書は必要ですか?
A. 失業保険は就職の意思と能力があることが前提です。
そのため、体調が回復し就労可能であることを確認される場合があります。
具体的な提出書類はハローワークの判断によりますが、主治医の意見確認を求められるケースもあります。
関連記事:失業保険は診断書があればすぐもらえる?提出のタイミングと注意点まとめ

まとめ|順番を間違えなければ両制度は活用できる

傷病手当金と失業保険は、同時に受け取ることはできません。
しかし、体調の回復状況に応じて順番に活用することは可能です。

  • 働けない間は傷病手当金
  • 就職可能になったら失業保険へ切り替え
  • その際は受給期間延長の手続きを忘れない

この流れを押さえておけば、制度上の取りこぼしを防ぐことができます。

特に重要なのは、
受給期間(原則1年)の管理と、切り替えのタイミングです。
ここを誤ると、本来受け取れたはずの給付が受けられなくなる可能性があります。

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