失業保険の受給中に会社役員に就任したら、失業保険はもらえないのでしょうか?
取締役や監査役などの役員は、役員報酬をもらえる場合ともらえない場合があります。報酬の有無によって失業保険の取り扱いが異なってくるので、正しい知識をもって対応しましょう。
今回は報酬のない「名義だけの役員」でも失業保険をもらえるのか、過去に取締役や監査役だった方が退職後に失業保険を受け取れるのか解説します。
今後退職予定があり、失業保険を受け取りたい方はぜひ参考にしてみてください。
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1.失業保険を受け取れる条件

失業保険とは、雇用保険による基本手当です。
一定期間以上雇用保険に加入していた「労働者」に対し、退職後、就職活動をする経費や生活費にあてるためのお金として、基本手当(失業保険)が支給されます。
失業保険を受け取るための要件は、以下のとおりです。
- 退職前2年間に12ヶ月以上雇用保険に加入している
ただし会社都合退職や特定理由離職者の場合、退職前の1年間に6ヶ月以上雇用保険に入っていれば足ります。
- 就職の意思と能力がある
- 求職活動を行っている
- 実際に失業状態にある
2.会社役員になった場合も失業保険を受け取れる?
それでは会社役員は失業保険をもらえないのでしょうか?
上記の条件に該当するのか検討してみましょう。
2-1.以前に雇用保険に入っていたか
失業保険をもらえるのは、退職前の一定期間以上雇用保険に入っていた人だけです。
通常、会社役員は雇用保険に入っていません。
以前にどこかの会社で取締役などをしていて退職したとしても、一般的には雇用保険に加入していなかった方が多いでしょう。その場合、失業保険を受け取れません。
一方、以前はどこかの会社で「労働者」として勤務していて雇用保険に加入していた方であれば、失業保険を受け取れる可能性があります。
2-2.名義だけの役員なら失業保険を受け取れる可能性がある
会社役員であっても、必ず報酬をもらえるとは限りません。
たとえば立ち上げたばかりの会社で収益が上がっていなければ、役員報酬が0円のケースもよくあります。役員は労働者ではないので「最低賃金法」が適用されず、無報酬でも法律上の問題はないためです。
また親族が経営している会社などで、名義だけの役員になるケースもあるでしょう。
たとえば夫が経営する会社の監査役として妻が就任する場合などでは、妻に監査役の報酬が払われないケースも少なくありません。
このように、「役員報酬が0円」の場合には、その人は「失業者」と判定される可能性があります。つまり「名義だけの役員」なら、その他の要件を満たす限り失業保険をもらえるケースも考えられます。
2-3.報酬を受け取ると失業保険をもらえない
会社役員になって報酬を受け取る場合には、基本的に失業保険をもらえません。
役員として報酬をもらっている限り「失業状態」とはみなされないためです。
たとえ立ち上げたばかりの会社であっても、役員に就任して報酬を受け取るようになれば、失業保険を受け取る資格は認められません。
ハローワークに隠れて報酬を受領すると失業保険の「不正受給」になってしまう可能性もあるので、注意しましょう。
2-4.求職活動を続ける必要がある
名義だけの役員の就任後も失業保険を受け取るためには「求職活動」を続ける必要があります。
ハローワークでは4週間に1度、「失業認定」の手続きが行われます。このとき、どういった求職活動を行ったのか報告しなければなりません。
取締役に就任して就職活動をやめてしまったら、たとえ無報酬でも失業保険を受け取れなくなってしまいます。
いずれ別会社に就職することを念頭に、教育訓練を受けたりハローワークや民間の職業紹介会社に相談したり求人に応募したりして、就職活動を続けましょう。
2-5.ハローワークによって判断される
名義だけの役員が失業保険を受け取れるかどうかは、最終的にハローワークにおける個別の判断事項となります。
会社の設立時期、業務内容、今後の収益の見込みや役員の立場、種類、今後の報酬発生の見込みなど、諸事情を総合考慮したうえで失業保険を支給するかどうか判定されます。
無報酬で名義だけの役員に就任するけれども失業保険を受給したいなら、個別の状況を伝えてハローワークへ相談してみてください。
3.失業保険の受給中に役員に就任するならハローワークへ報告を
失業保険の受給中、親族が会社を立ち上げたりして名義だけの役員に就任するケースがあります。
このように、「受給中に役員になったとき」には必ずハローワークへ申請しましょう。
もしも報酬を受け取るなら、失業保険の受給資格はなくなります。無申告で失業保険をもらい続けていたら、後に不正受給が発覚してトラブルになってしまう可能性が高くなるでしょう。
また無報酬であっても、やはりハローワークへ申告すべきです。実際に失業保険の受給が継続されるかどうかはハローワークの判断事項となるからです。
申告しておらず後で役員就任が発覚すると、「実際には報酬をもらって不正受給していたのではないか?」と疑われるリスクも発生します。
失業保険受給中は「就職活動をすることを条件に国から手当をもらっている立場」なので、役員就任やアルバイトなどの活動をしたら必ず報告しなければなりません。
4.名義だけの役員が失業保険をもらう手順や必要書類
名義だけの役員となっている方が失業保険をもらうには、以下のようにして手続きを進めましょう。
4-1.会社から離職票をもらう
まずは前職の会社から離職票をもらいましょう。
離職票は、退職後約10日以内に元従業員へ交付されるケースが多数です。もらえない場合には会社へ問い合わせてください。
4-2.ハローワークへ申請する
次にハローワークへ失業保険の申請をしましょう。
会社役員の方の場合には、通常の必要書類以外にも以下のような書類が必要です。
以下の証明書は、役員になっている会社の社長(代表者)」に作成してもらわねばなりません。
- 役員報酬が支給されていない証明書
「会社では役員報酬が支払われていない」と書いてもらう必要があります。
- 求職活動に対する同意書
「役員が求職活動を行ってもよい」と同意してもらうための書面です。
- 他社へ就職することへ同意書
「役員が他社へ就職してもかまわない」と書いてもらう必要があります。
名義だけの役員が失業保険をもらうには、事前に社長に上記のような証明書や同意書を書いてもらっておきましょう。
必要書類や証明書、同意書を提出すると、ハローワークで失業保険を給付してもよいかどうか、判断が下されます。
4-3.雇用保険説明会へ参加
失業保険の手続きを前に進められるなら、ハローワークで開催される雇用保険説明会に参加しましょう。説明会が終了すると、雇用保険受給者証が交付されます。
4-4.失業認定
ハローワークで定められた日に「失業認定」を受けます。
失業認定日までにきちんと求職活動を行っていて、まだ就職が決まっていなければ「失業認定」を受けられます。そうすると、指定した振込先へ失業保険の手当金が振り込まれます。
5.会社役員を退職したら失業保険をもらえるの?
以前に会社役員をして報酬をもらっていても、退職したら収入がなくなります。その場合、次の就職先が決まるまでの間、雇用保険から失業保険をもらえるのでしょうか?
5-1.会社役員は雇用保険に入らない
失業保険をもらうには退職前の一定期間「雇用保険」に入っていなければなりません。
通常の場合には退職前の2年間に12ヶ月間、会社都合退職や特定理由離職者の場合には退職前の1年間に6ヶ月間の加入期間が必要です。
しかし会社役員の場合、ほとんどのケースで「雇用保険」には入っていません。雇用保険は労働者のための保険だからです。役員は労働者ではないので、雇用保険法や労働基準法、最低賃金法などが適用されません。
もともと労働者だった場合でも、取締役や監査役、執行役員などの役員になると、雇用保険から脱退するのが通常の取り扱いとなっています。
会社役員が会社との委任契約を終了して無職になっても、基本的には失業保険をもらえないと考えましょう。
5-2,会社役員でも雇用保険に入るケース
ただし一定の場合、例外的に会社役員でも雇用保険に加入するケースがあります。
それは以下のように「役員になっても、従業員としての立場が残る」場合です。
- 工場長が役員に昇格し、工場長の仕事と役員を兼任する
- 部長や支店長が役員になったが、従来の従業員の仕事も兼任する
このように従業員と兼任するなら、従来の従業員としての立場で雇用保険に入り続けられるケースもあります。そういった方が会社を辞めたら、従業員として加入していた雇用保険から失業保険を受け取れる可能性があります。
5-3.会社役員兼従業員が失業保険をもらえる条件
会社役員と従業員を兼任していた方が会社を辞めても、必ず失業保険をもらえるとは限りません。
「従業員としての地位が名義だけ」で、実質的には役員としてのはたらきしかしていなければ、失業保険を支給する理由がないためです。
会社役員兼従業員が失業保険をもらうには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 給与額の内訳で、従業員の給料のほうが多い
会社役員兼従業員の場合、役員報酬と従業員としての給料の両方をもらっているはずです。失業保険を受け取るには、基本的に賃金額が役員報酬部分を上回っている必要があります。
つまり全体の報酬額の半分以上が賃金でなければなりません。
役員報酬部分が高い方は失業保険をもらえない可能性が高くなります。
- 従業員としての労働実態がある
実際に「従業員として労働している」実態が要求されます。
工場長、支店長とはいっても名義のみでほとんど監査役の仕事しかしていなければ、失業保険は受け取れません。
具体的には出勤簿、日報、雇用契約書などの資料から従業員としての仕事をしていたかどうかが判断されます。
5-4.ハローワークへの届出
会社役員兼従業員の方が失業保険をもらうには、ハローワークへ「兼務役員」の届出をしなければなりません。
その際、就業規則や会社の登記事項証明書、賃金台帳、雇用契約書などの書類も必要となります。これらの資料をみて、ハローワークが申請者に失業保険の受給資格が認められるかを判定します。
5-5.雇用保険の受給期間にも要注意
会社役員兼従業員の方が失業保険を申請する場合、「失業保険の受給期間」にも注意しましょう。失業保険は、基本的に「退職後1年以内」にしか支給されません。1年を過ぎると、未払いの部分があっても受け取れなくなってしまいます。
たとえば過去に100%従業員の時代があり、その後会社役員兼従業員となった方のケースを考えてみましょう。この場合、従業員時代と会社役員時代を通算して雇用保険への加入期間を計算できます。しかし報酬の中で「役員報酬の部分」が大きい場合、失業保険の受給条件を満たしにくくなります。役員就任後1年が経過した時点で失業保険を受け取れなくなる可能性が高くなるでしょう。
一方、兼務役員の報酬のうち「役員報酬の部分」が少々多くても、役員就任後1年未満であれば、失業保険をもらえる可能性があります。
役員を辞めて失業保険を受け取りたい場合には、早めにハローワークへ相談して失業保険の申請を進めましょう。
6.会社役員と失業保険の関係がわからないときの相談先
名義だけの役員の方が失業保険を申請する場合や失業保険受給中に役員に就任する場合、過去に会社役員だった方が失業保険を申請する場合など、会社役員の方が失業保険を受け取る場合には通常の会社員の方とは異なる取り扱いになります。
素人の方には大変わかりにくいでしょう。
正しく対応しないともらえる失業保険をもらえなくなってしまったり、不正受給を疑われたりするリスクも発生します。ハローワークに個別に資料を提出し、状況を説明しなければならないケースも多数です。
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会社役員の方などの特殊なケースであっても用意すべき資料やハローワークへの申請方法についてアドバイスを致しますので、スムーズに手続きを進められるでしょう。
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