退職日を会社が勝手に決めるのは違法?労働基準法上のルールと会社都合になるケースを徹底解説

「会社から勝手に退職日を指定された」
「まだ働きたいのに、辞める日を早められた」

このような状況に不安を感じている方は少なくありません。

結論から言うと、労働者の合意がないまま会社が退職日を一方的に決める行為は、法律上「解雇」に該当するため、原則として違法です。
本来、退職日は労働者と会社の双方が合意して決めるものです。

この記事では、会社が勝手に退職日を決めた場合の違法性の境界線や、受け取れる手当、
損をしないための対処法について解説します。

育子(元ハローワーク職員)
執筆者
育子(元ハローワーク職員)
ハローワークの窓口で10年以上、数千件に及ぶ相談・審査業務を担当。制度の複雑さや情報の少なさが原因で、自分に合った選択肢や権利を逃してしまう方を大勢見てきました。現場を知り尽くした元職員の視点から、公的制度の正しい活用法や、後悔しないための働き方のヒントとなるような情報を、実務経験に基づき分かりやすくお伝えします。
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【結論】労働者の合意がない退職日の決定は「解雇」扱いになる

会社が労働者の意思を無視して退職日を一方的に決めることはできません。
この行為は、実質的に「解雇」と同じ扱いになります。

判断の境界線

  • 労働者が同意した場合: 合法(合意退職)
  • 労働者が拒否している場合: 原則として違法(一方的な解雇、または不当な退職勧奨)

本来、退職日は労働者と会社が話し合い、双方が納得した上で確定させるものです。
労働者の合意がないまま退職日を前倒ししたり、勝手に決めたりする状況は、
法的には「労働契約の一方的な解除」とみなされます。

たとえ会社側が「辞めると言ったのだから、いつ辞めさせても会社の自由だ」と主張したとしても、労働者の承諾がない限り、その指定に法的効力はありません。

退職勧奨の詳細や会社都合退職にできる条件は、以下の記事で解説しています。

退職勧奨とは?自己都合との違い・会社都合になる条件・拒否できるのかまで徹底解説

解雇予告手当の支払い義務と金額の目安

会社が退職日を一方的に決め、その日が通知から30日以内である場合、
会社には解雇予告手当を支払う義務が生じます。

支払いが必要になる具体的な基準は以下の通りです。

  • 30日未満の予告で即日解雇する場合
    解雇日までに30日の猶予がないため、会社は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。
  • 予告の日数が30日に満たない場合
    通知から退職日までが30日未満であれば、その不足している日数分の平均賃金を支払わなければなりません。
  • 30日以上前に予告があった場合
    金銭的な手当の支払いは不要ですが、そもそも解雇そのものに客観的に合理的な理由がない限り、不当解雇として無効になる可能性があります。

例えば、今日「明日で辞めてもらう」と告げられた場合、
会社は29日分以上の平均賃金を支払わなければ違法となります。

このルールは労働基準法第20条に基づき、労働者の急な失職を防ぐために定められています。

会社都合退職のデメリットは?会社側・従業員側それぞれの影響を徹底比較

会社に退職日を決められた時の正しい対処手順

もし会社から強引に退職日を指定された場合は、以下の手順で冷静に対応を進めてください。

① その場で合意のサインをしない

一度同意の署名をしてしまうと合意退職とみなされ、後から事実を覆すのが非常に困難になります。納得できない日程であれば「一度持ち帰って検討します」と伝え、その場での即答を避けることが肝心です。

② 解雇としての通知を求める

会社側が一方的に決めた退職日を譲らないのであれば「これは会社都合による退職(解雇)ですね」と明確に確認してください。
口頭だけでなく、メールや録音などで証拠を残しておくと、後の手続きがスムーズになります。

③ 解雇理由証明書の交付を請求する

会社に対し、なぜその日に辞めさせられるのかという具体的な理由を記載した解雇理由証明書の発行を求めてください。
これは労働基準法第22条に基づき、労働者が請求した際に会社が拒否できない書面です。

④ 離職票の理由を確認する

退職後に会社から届く離職票の離職理由が、事実と異なる自己都合になっていないか厳しくチェックしてください。
ここが正しく処理されていないと、失業保険の受給時期や金額に悪影響を及ぼす可能性があります。

退職前にやっておくべき給付金対策とは?傷病手当金・失業手当の申請準備を徹底解説

会社に言い返せない時の「拒否フレーズ」具体例

納得できない退職日を押し付けられた際、角を立てずに法律上の権利を主張するための具体的な言い回しを紹介します。
感情的にならず、合意していない事実を積み上げることが重要です。

基本の拒否パターン(希望日を譲らない)

「提示いただいた退職日は私の希望とは異なります。その日程での退職には同意できかねますので、当初の予定通り〇月〇日まで就労させてください。」

会社都合(解雇)を認めさせるパターン

「会社側で一方的に退職日を早めるのであれば、それは『会社都合による解雇』ということでよろしいでしょうか。その場合、解雇理由証明書の発行をお願いいたします。」

強引な手続きを牽制するパターン

「退職日の合意が取れていない状態で手続きを進められるのであれば、ハローワークなどの行政機関に事実関係をありのまま報告し、相談させていただきます。

ポイントは、
「自分から辞める(自己都合)」のではなく「会社が辞めさせる(会社都合)」という点に論点を置くことです。

会社側は「解雇」という言葉に伴う法的なリスクを非常に嫌うため、
このフレーズを出すだけで強引な日程調整が止まるケースも少なくありません。

もし、これらのフレーズを伝えても「もう明日から来なくていい」と強行された場合は、
無理に出勤せず、その発言を録音やメールで記録に残してください。
解雇予告手当の請求権や、失業保険を会社都合で受給するための強力な武器になります。

会社都合退職にするにはどうすればいい?パワハラや残業を理由に自己都合から変更する方法

退職日を勝手に決められたら「失業保険」を有利に受給できる

会社に退職日を一方的に指定された場合でも、適切な手続きを申請することで、
失業保険を有利に受給することができます。

「会社都合退職」として有利に処理される

会社が勝手に決めた退職日に従わされる状況は、客観的に見て会社都合となります。
会社側が自己都合として処理しようとしても、ハローワークで事実を伝えることで、給付制限のない有利な区分へ変更できる可能性が極めて高いです。

参照:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(厚生労働省)

会社都合退職した場合の失業保険受給の期間や条件を解説!自己都合から変更できるケースも紹介

受給までの「待機期間」が大幅に短縮される

自己都合退職の場合、支給までに1ヶ月の給付制限期間がありますが、
会社都合であれば7日間の待機期間の後、すぐに支給が始まります。

自己都合退職の失業保険 「待機期間」と「給付制限期間」の違いとは?

「給付日数」が通常より多くなる

年齢や保険の加入期間にもよりますが、会社都合の場合は自己都合よりも給付日数が長く設定されるのが一般的です。
より多くの総額を受給できるため、金銭的なゆとりを持って次のステップを検討できます。

失業保険の計算方法とシミュレーション|自己都合・会社都合・手取り別に解説

ストレスによる体調不良時は「傷病手当金」も選択肢に

強引な退職日の決定により精神的なダメージを受けた場合は、失業保険の前に健康保険から支給される傷病手当金を優先して受給し、じっくりと静養する道も残されています。

傷病手当金と失業保険、どっちを先に受給すべき?数百万円変わる「正しい受給順序」を徹底比較

よくある質問(Q&A)

Q1. 会社が決めた退職日になると、残っている有給休暇はどうなりますか?
A. 有給休暇を消化する権利は退職日が早まっても失われません。
退職日までに使い切れない場合は、期間の延長を求めるか、未消化分の買い取りについて会社と協議を行いましょう。
関連記事:退職時に有休消化できる?拒否されたときの対処法をわかりやすく解説

Q2. 口頭で「わかりました」と伝えてしまった後でも、退職日の変更を拒否できますか?
A. 署名や捺印をする前であれば、速やかに合意できない旨を伝えてください。
口頭で一度承諾した場合でも、改めて書面やメールで拒否の意思を記録に残すことで、事実を覆せる可能性があります。
関連記事:退職時に誓約書へサインは必要?拒否できる?効力・同業他社への転職制限も徹底解説

Q3. 会社都合で辞めた場合、次の転職活動で不利になりませんか?
A. 会社側の一方的な都合による退職であれば、転職活動に不利に働くことはほぼありません。
面接の際は「会社の事業方針による退職日指定」と客観的な事実を説明すれば、再就職先への影響を最小限に抑えられます。
関連記事:会社都合退職は履歴書にどう書く?書かないとバレる?転職への影響まで徹底解説!

まとめ|一方的な退職日の決定は「会社都合」で有利な受給を

会社が労働者の合意なく退職日を決定することはできません。

この状況は法的に解雇退職勧奨に該当するため、
毅然とした態度で会社都合としての処理を求めてください。

正しく対処することで、失業保険の受給開始が早まったり、
給付日数が増えたりといった大きなメリット
を得られます。

また、不当な扱いに伴うストレスで体調を崩している場合は、
無理に再就職を急がず、傷病手当金を受給しながら療養する選択肢もあります。

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