「傷病手当金」という制度を聞いたことはあるけれど、実際にどうやって申請するのか、何を準備すればいいのか分からない——
そう感じている方は多いのではないでしょうか。
病気やケガ、うつ病や適応障害などで働けなくなったときに、一定の条件を満たせば給料の約3分の2が支給されるこの制度は、生活を支える大きな助けになります。
しかし、実際に申請するとなると、医師の診断書をもらうタイミングや、会社への手続き、保険組合への提出方法など、戸惑うポイントも少なくありません。
特に退職を控えている方や、休職制度のない職場に勤めている方にとっては、制度の使い方に注意が必要です。
この記事では、傷病手当金の基本的な受給条件から、申請に必要な書類、実際の申請手順、退職予定者が気をつけるべき点までを、初めての方にも分かりやすく丁寧に解説していきます。
目次
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傷病手当金とは?制度の基本と目的を知ろう
傷病手当金は、病気やケガで会社を休まなければならなくなったときに、収入の一部を補うための公的制度です。
健康保険に加入していれば、給与が支払われない休職期間中でも、生活費を支える給付が受けられます。
この制度の主な目的は、「療養に専念できるよう経済的不安を軽減すること」です。
特に、うつ病や適応障害といった精神疾患も対象となる点は見逃せません。
傷病手当金の受給条件|あなたは対象になる?
傷病手当金を受け取るには、以下4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外のケガや病気であること(業務災害は労災保険の対象)
- 病気やケガによって仕事ができない状態であること
- 連続する3日間(待期期間)を含む4日以上会社を休んでいること
- 給与の支払いがない、もしくは一部しか支給されていないこと
さらに、退職後に傷病手当金の受給を継続するには、「退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していたこと」が必要です。
いくらもらえる?金額と支給期間の計算方法
傷病手当金の金額は、おおよそ以下の計算式で算出されます。
標準報酬日額 × 2/3 × 日数(支給対象日数)
たとえば、標準報酬月額が30万円の方であれば、1日あたりの支給額は約6,600円程度となります。
支給期間は「支給開始日から最長1年6ヶ月」まで。
ただし、通算日数なので中断があってもその期間を含めてカウントされます。
傷病手当金の申請スケジュールとタイミング
申請の流れは以下の通りです。
- 初診を受ける(診断書の基礎になる)
- 連続3日間の待期期間が発生
- 4日目以降から受給対象となる
- 月単位、または複数月まとめて申請可能
多くの健保では申請から振込まで約1〜2ヶ月程度かかるため、早めの手続きをおすすめします。
傷病手当金申請書はどうやって用意する?
傷病手当金の申請書は、加入している健康保険によって入手先が異なります。
自分がどこに加入しているかを確認したうえで、以下の方法で取得しましょう
協会けんぽに加入している場合(中小企業など)
会社員やアルバイトで、協会けんぽに加入している場合は、以下のいずれかで申請書を入手できます。
- 協会けんぽの公式サイトからダウンロード
→こちらからダウンロードできます。 - 勤務先の総務・人事に依頼してもらう
- 最寄りの協会けんぽ支部に直接出向いて受け取る
健康保険組合に加入している場合(大企業など)
自社で独自の健康保険組合を持っている企業に勤めていた場合は、その組合ごとの申請書式があります。
そのため、
- 自分がどの健康保険に加入していたかをまず確認
- 加入していた健保組合の公式サイトから申請書をダウンロードする
- 不明な場合は、元の勤務先に問い合わせる
健康保険組合ごとに申請書の形式や提出先、必要書類が異なることがあるため、協会けんぽ用の申請書を誤って使わないよう注意が必要です。
また、健康保険組合では申請書の他にも必要な添付書類を求められるところが多いです。
公式サイトで必要書類を確認し、不明点は健康保険組合や勤務先に問い合わせましょう。
【チェックリスト】必要書類と書き方の注意点
傷病手当金の申請では、書類の不備や記入ミスが支給遅れ・不支給の原因になることもあります。
ここでは、必要書類の種類と、それぞれの記入時の注意点をまとめました。
提出する書類はこの3つ
- 傷病手当金支給申請書(本人記入欄)
→ 氏名・生年月日・病名・初診日・休業期間・給与状況などを記入します。 - 医師の意見欄
→ 診断名・労務不能期間・治療内容など。医師が記入します。 - 事業主の証明欄(勤務先が記入)
→ 休業期間中の出勤・給与の支払い状況などを証明します。
書き方の注意点
- 初診日・病名の記載ミスに注意
特に「初診日」が正しくないと支給対象から外れる場合も。
医療機関の診療記録と一致しているか、必ず確認しましょう。 - 医師が非協力的な場合は病院を変える選択も
傷病手当金に理解のない医師だと、「労務不能」と書いてくれないケースも。
必要であれば制度に詳しい医療機関に相談しましょう。 - 会社が協力してくれないときは?
在職中は事業主欄が原則必要ですが、退職後に申請する場合は本人の記載のみで済むケースもあります。
会社側の協力が得られないときでも、あきらめずに制度の仕組みを活用してください。
→会社が傷病手当金の書類を書いてくれない!拒否されたときの対処法まとめ
申請の流れ5ステップ|提出先と処理の流れ
傷病手当金の申請は、一見むずかしそうに感じるかもしれませんが、実際の流れは5つのステップに分かれており、順を追って準備すれば誰でも確実に手続きできます。
ただし注意したいのは、申請書の記入には順番があるということです。
とくに「本人記入欄」は、先に医師に記入してもらった内容(初診日や労務不能期間など)を確認してから記入するのが基本です。
自己判断で先に書いてしまうと、医師の記載と食い違ってしまい、差し戻しになるケースもあります。
これから紹介する5ステップを、順番通りに進めていけば大丈夫です。
① まずは医療機関を受診し、初診日を確定
申請のスタートは「初診日」の確定から。
傷病手当金では、労務不能となった原因の症状で最初に診察を受けた日=初診日が重要です。
この日をもとに、休業開始日や受給期間が決まるため、曖昧にせず記録を残しておきましょう。
② 医師に「療養担当者記入欄」を記入してもらう
診察後、医師に傷病手当金支給申請書の医師記入欄を依頼します。
ここには病名、労務不能の理由、治療内容、労務不能の期間などを記載してもらいます。
診断書とは異なり、保険者(健保)所定の様式があるため、事前に申請書を印刷して持参するとスムーズです。
→医師にどう伝える?傷病手当金申請書を通りやすくする方法 診断書の書き方?
③ 本人記入欄を記入する
傷病手当金支給申請書には、本人が記入する欄(被保険者記入欄)があります。
ここには以下のような内容を記載します。
- 氏名・生年月日・連絡先
- 初診日・労務不能となった日付
- 休業した期間(申請対象期間)
- 給付金の振込先口座
初診日や労務不能の期間については、医師の意見欄を確認してから正確に転記しましょう。
申請書の本人記入欄は、医師の記載内容と矛盾しないようにすることが大切です。
また、申請書の記入に不安がある場合は、加入している健康保険組合や協会けんぽのホームページで記入例(記載例)を確認するのがおすすめです。
記入見本に沿って進めれば、記入ミスを防げます。
なお、傷病手当金は受給期間が長くなると、申請書を複数回提出する必要があります。
その都度、本人記入欄の記載は必須になりますので、初回の記入時に記載例をチェックしておくと、後々もスムーズに対応できます。
④ 勤務先に「事業主記入欄」の記入を依頼する
次に、勤務先(会社)に申請書を渡して、「事業主記入欄」に記入してもらいます。
ここには、以下のような内容が記載されます。
- 勤務実態(勤務日数・時間など)
- 休業の期間
- 給与の支払い状況(有給・欠勤など)
- 雇用形態や就業規則上の扱い
この情報は本人では記入できないため、必ず会社に依頼する必要があります。
在職中であれば、会社が申請書全体を取りまとめて、保険者へ提出してくれるケースもあります。
人事・総務担当に相談し、「会社提出が可能かどうか」を確認しておくと安心です。
一方、すでに退職している場合は、事業主欄を記入してもらう必要があるものの、会社が書類を提出してくれるわけではありません。
本人が自分で保険者に郵送する流れになる点にも注意が必要です。
⑤書類がすべてそろったら保険者に提出
本人・医師・事業主の3者分の記入がすべてそろったら、申請書を健康保険組合または協会けんぽに提出します。
提出先は保険証で確認
- 保険証に「協会けんぽ」と書かれている → 協会けんぽへ
- 「○○健康保険組合」などと記載 → 各健康保険組合へ
在職中の方は、会社がまとめて提出してくれることもあります。
退職後の方は、本人が郵送などで直接保険者へ提出することが一般的です。
⑥ 審査を経て、指定口座に振込
保険者側で審査が行われ、問題がなければ指定口座に支給額が振り込まれます。
初回は2週間〜1ヶ月程度かかることもありますが、2回目以降は流れが分かるため、申請負担も減っていきます。
なお、万が一「不支給」になった場合でも、やり直せるケースはあります。
理由を確認し、必要な対応を取ることで再申請できる可能性も。
詳しくは別記事「傷病手当金がもらえない!?不支給になる8つの理由と対策を徹底解説」をご覧ください。
退職予定・休職中の人が注意すべきポイント
退職後に傷病手当金を継続して受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 退職日までに1年以上の被保険者期間がある
- 退職日前にすでに「労務不能の状態」である
また、申請期間が長引くと「失業保険との切り替え」が必要になる場合もあります。
詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問(Q&A)
Q. 医師が非協力的で意見書を書いてくれないときは?
A. 他の医療機関を受診して制度に理解のある医師に相談することをおすすめします。
Q. 会社が事業主欄を記入してくれません。どうすれば?
A. 在職中は協力が必要ですが、退職後であれば本人記載+離職証明などで対応できるケースもあります。
Q. 書類は会社が出してくれるんですか?
A. 在職中であれば、会社が書類を回収して一括提出してくれることもあります。事前に人事に相談を。
Q. 在職中と退職後では、傷病手当金の申請内容に違いがありますか?
A. はい、あります。
在職中は「事業主の証明欄」の記入が必要です。
退職後は、退職日以降の分は事業主欄なしで提出可能です。
ただし、退職前から労務不能だったことが条件です。
Q. 傷病手当金の申請期限はありますか?
A. 原則として支給対象期間の翌日から2年以内です。過ぎると時効となるので注意しましょう。
Q. 診断書と医師の意見書は別物ですか?診断書は必要ですか?
A. はい、別物です。診断書は必ずしも必要ではありません。
傷病手当金の申請に必要なのは、申請書内の「医師の記入欄」への記入です。
いわゆる診断書は、会社提出用として求められることがありますが、健康保険組合への申請には不要な場合も多いです。
申請に不安がある人は、専門サポートの活用も
傷病手当金の申請には、医師・勤務先・健保の連携が必要で、初めての人にとってはハードルが高く感じるものです。
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