結論から言うと、 就職困難者としてハローワークに認定されると、通常の失業保険と比べて「支給日数」と「総受給額」が大きく増える可能性があります。
具体的には、自己都合退職で90日しか受給できないケースでも、就職困難者に認定されれば300日〜最大360日まで受給できることがあり、結果として100万円以上の差が生じることも珍しくありません。
この記事では、就職困難者に認定された場合に、失業保険の支給日数や金額が通常ケースと比べてどの程度変わるのかを、制度の仕組みに沿って解説していきます。
失業保険制度全体の仕組みを先に把握したい方は、こちらの記事もあわせて参考にしてください。

目次
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通常の失業保険はいくらもらえる?支給日数と金額の基本

まずは、就職困難者に該当しない「通常の失業保険(基本手当)」の仕組みから整理します。
支給日数は「雇用保険の加入期間」で決まる
自己都合退職(一般離職者)の場合、支給日数は年齢ではなく雇用保険の加入期間によって決まります。
| 被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
※1年未満の場合、原則として失業保険は受給できません。
参照:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
支給金額の計算方法
失業保険の総額は、次の式で算出されます。
賃金日額 × 給付率 × 支給日数
- 賃金日額:退職前6か月の賃金合計 ÷ 180日(上限・下限あり/賞与・退職金は含まない)
- 給付率:約50〜80%(60〜64歳は45〜80%)。賃金が低いほど高く、高いほど低くなる仕組み
参照:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
具体例(月収30万円・60歳未満・自己都合の場合)
- 賃金日額:10,000円(30万円×6か月 ÷ 180日)
- 給付率:約61%
- 基本手当日額:6,102円
- 支給日数:90日(加入1年以上)
- 総支給額:6,102円 × 90日 = 約55万円
つまり、90日間の受給で約55万円が目安です。
就職困難者とは?失業保険が優遇される特例認定

就職困難者とは、病気や障害などにより、一般的な条件での就職が難しいとハローワークが判断した人を指します。
該当すると、失業保険(基本手当)の給付日数などが優遇されます。
重要なのは、次の状態であることです。
- 働く意思はある
- ただし、通常どおりの就労は難しい
- そのうえで、「働ける状態」であることが前提(完全に働けない=労務不能なら、それは傷病手当金の対象)
主な対象者
- 各種手帳を持っている方……身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか(等級は問わず対象)
- 身体障害・知的障害・精神障害がある方
- うつ病・双極性障害などで就労が困難な状態にある方
手帳がなくても認定される場合
手帳を持っていなくても、統合失調症・うつ病・双極性障害(躁うつ病)・てんかんなどは、主治医の意見書によって認定されることがあります。
※その他の病気で認定されるかは管轄のハローワークによって判断が異なるため、事前確認がおすすめです。
認定にはハローワーク指定の主治医の意見書がほぼ必須です。
就職困難者に認定されると何が変わる?

就職困難者としてハローワークに認定されると、失業保険(基本手当)の所定給付日数が通常よりも長くなります。
所定給付日数は最大360日まで
就職困難者の場合、所定給付日数は年齢に応じて次のようになります(いずれも加入1年以上が前提)。
| 離職時の年齢 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 45歳未満 | 最大300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 最大360日 |
※雇用保険の加入期間が1年未満の場合は、原則150日です。
通常と比べると約2〜4倍
通常の自己都合退職では、所定給付日数は90日〜150日が一般的です。
就職困難者はこれと比べて約2〜4倍の受給日数になります(例:90日→300日で約3.3倍、150日→360日で約2.4倍)。
さらに、就職困難者には次のメリットもあります。
- 給付制限がない……待期7日後から受給が始まり、早く受け取れる
- 受給期間も延長……所定給付日数が360日の場合、受給期間が「1年+60日」に延長され、長い日数を受け切れる
金額差シミュレーション

では、実際にどの程度の金額差が生じるのか、同じ条件で比較してみましょう。
モデル条件
- 退職前の月収:30万円
- 年齢:30歳
- 雇用保険の加入期間:8年
受給額の比較
- 通常(自己都合退職)
支給日数:90日
受給総額:約55万円 - 就職困難者として認定された場合
支給日数:300日
受給総額:約183万円
このケースでは、約128万円の差が生じる計算になります。
支給日数が延びることで、1日あたりの金額が同じでも、最終的に受け取れる総額には大きな違いが出ます。
そのため、就職困難者に該当する可能性がある場合は、認定の可否が生活設計に大きく影響するといえるでしょう。
就職困難者なら「1年未満」でも受給できる?特例のしくみ

通常、失業保険を受け取るには、過去2年間で12か月以上の雇用保険加入が必要です。
そのため、1年未満で退職した場合は、原則として受給できません。
6か月でOKになるのは「特定理由離職者/特定受給資格者」
ただし、病気・障害などでやむを得ず退職した場合(特定理由離職者)や、倒産・解雇等で退職した場合(特定受給資格者)は、過去1年間で6か月以上の加入があれば受給できます。
ここで大切なのは、この6か月の緩和は「就職困難者だから」ではなく、離職理由が特定理由離職者などに当たるからという点です。
就職困難者なら、その上で「1年未満でも150日」
そのうえで就職困難者にも認定されていると、加入期間が1年未満でも、所定給付日数が150日になります(通常の自己都合は1年未満だと原則対象外)。
つまり、しくみは次の二段構えです。
- 離職理由が特定理由離職者/特定受給資格者 → 6か月以上で受給資格が得られる
- 加えて就職困難者に認定 → 1年未満でも150日分が支給される
たとえば(7か月勤務で退職した場合)
- 普通の自己都合で7か月 → 受給できません(12か月が必要)
- 病気などでやむを得ず退職(特定理由離職者)+就職困難者に認定 → 150日分が支給される可能性があります
短期間で退職した場合でも、退職理由と認定の条件次第では制度の対象になります。
自分がどれに当てはまるかは、ハローワークで確認しておくことが大切です。
就職困難者として認定されない主なケース

就職困難者は、申請すれば必ず認定される制度ではありません。
状況や書類の内容によっては、認定されない、あるいは失業保険そのものが受けられないケースもあります。
特に注意したいのが、次のようなケースです。
- 主治医の意見書に「就労不能」「療養専念」と明記されている
- ハローワークで求職の意思が確認できないと判断される
- 傷病手当金を同じ時期に受給している
- ハローワーク所定様式以外の意見書を提出している
就職困難者は、「働く意思はあるが、一般的な条件では就職が難しい人」が対象です。
そのため、「完全に働けない状態」と判断されると、失業保険の対象外になる点には注意が必要です。
就職困難者の申請手続きや、主治医の意見書の取得方法については、 こちらで詳しく解説しています。
認定までの流れと注意点

就職困難者として認定されるためには、所定の流れに沿って手続きを進める必要があります。
大まかな流れは次のとおりです。
認定までの流れ
- 精神科・心療内科を受診
現在の症状や就労状況について医師の診察を受けます。
就職困難者の認定には、医師の判断が前提となります。 - ハローワーク所定の主治医意見書を作成
診察後、ハローワーク指定様式の「主治医の意見書」を医師に記入してもらいます。
任意様式の診断書では認められないケースがあるため、様式の確認が重要です。 - ハローワークで申請・面談
主治医の意見書を持参し、ハローワークで申請を行います。
あわせて面談が実施され、就労状況や求職の意思などが確認されます。 - 認定後、支給日数が変更
就職困難者として認定されると、失業保険の支給日数が特例扱いとなり、通常より長く設定されます。
認定を受ける際の注意点
認定を受けるためには、次のポイントに注意が必要です。
- 意見書の表現に注意
「就労不能」「療養専念」ではなく、「一般就労が困難」「配慮があれば就労可能」といった表現が重要になります。 - 認定後も求職活動は必要
就職困難者として認定された後も、原則として月1回以上の求職活動実績が求められます。
よくある質問
Q1. 障害者手帳がなくても、就職困難者として認定されますか?
A. 認定される可能性はあります。
障害者手帳がなくても、精神科・心療内科の医師が作成するハローワーク所定の「主治医の意見書」により、一般就労が難しい状況であることが確認されれば、就職困難者として認定されるケースがあります。
関連記事:うつ病でも就職困難者になれる?手帳なしで申請する方法と必要書類を解説
Q2. 主治医の意見書は、どうやってもらえばいいですか?
A. 精神科または心療内科を受診し、ハローワーク所定様式で作成してもらいます。
意見書は自由書式ではなく、ハローワーク指定のフォーマットを使用する必要があります。
診察時には、就労状況や日常生活への影響を具体的に伝えることが重要です。
関連記事:就職困難者の申請方法と必要書類を徹底解説|主治医の意見書の書き方・取得方法まで
Q3. 傷病手当金と失業保険は、同時にもらえますか?
A. 同時に受給することはできません。
傷病手当金は「働けない状態」、 失業保険は「働く意思と能力がある状態」を前提としているため、 制度上、併用は認められていません。
関連記事:傷病手当金と失業保険、どっちを先に受給すべき?数百万円変わる「正しい受給順序」を徹底比較
Q4. 傷病手当金をもらい終わったら、自動的に失業保険に切り替わりますか?
A. 自動では切り替わりません。
傷病手当金の終了後、あらためてハローワークで求職申込みと失業保険の申請手続きを行う必要があります。
医師の「就労可能」判断が出ていることも条件になります。
関連記事:傷病手当金と失業保険は両方もらえる?切り替えタイミングや条件を解説
Q5. 受給期間延長申請は、いつまでに出せばいいですか?
A. 病気やケガで30日以上働けない状態が続く場合は、できるだけ早く行う必要があります。
延長申請をしていないと、療養が長引いた場合に失業保険を申請できなくなる可能性があります。
回復後では間に合わないこともあるため、注意が必要です。
関連記事:失業保険の受給期限は延長できる!条件と方法について徹底解説
Q6. 就職困難者でも、再就職手当はもらえますか?
A. 条件を満たせば受給できる可能性があります。
就職困難者であっても、
- 一定日数以上の基本手当を残して就職した場合
- 1年以上の雇用見込みがある場合
などの条件を満たせば、再就職手当の対象になります。
関連記事:就職困難者でも再就職手当はもらえる?条件・計算方法・金額の違いまで解説
制度を正しく使うために
就職困難者の制度は、正しく理解し、適切な手続きを行えば、退職後の生活を支える大きな助けになります。
一方で、
- 意見書の記載内容
- 申請するタイミング
- 傷病手当金と失業保険の受給順
といったポイントを誤ると、本来受け取れるはずだった給付が受けられなくなるケースも少なくありません。
特に多いのが、
「制度は知っていたけれど、手続きの順番を間違えた」
「書類の書き方が原因で認定されなかった」
といった、知識不足ではなく“判断ミス”による損失です。
もし、
- 自分のケースで使える制度が分からない
- 申請の順番に不安がある
- 医師への伝え方や書類の準備に迷っている
と感じる場合は、制度に詳しい第三者のサポートを活用するのも一つの選択肢です。
正しい順番で進めることが、「もらえるはずだった給付を確実に受け取る」ための近道になります。
まとめ
退職後に体調を崩した場合、傷病手当金と失業保険の使い方を間違えると、本来もらえたはずの給付を受け取れなくなることがあります。
特に重要なのは、
- 傷病手当金と失業保険は同時に受給できない
- 療養中は受給期間延長申請を忘れない
- 回復後は就労可能判断をもとに失業保険へ切り替える
という制度の順番です。
手続きや判断に不安がある場合は、退職後の給付制度に特化したサポートを活用するのも一つの方法です。
社会保険給付金アシストでは、一人ひとりの状況に合わせて、傷病手当金・失業保険・就職困難者認定の整理と申請をサポートしています。
「この進め方で大丈夫か確認したい」という方は、まずは一度ご相談ください。
