退職後の生活を支える失業保険(基本手当)。
「税金はかかるのか」「確定申告は必要なのか」「扶養から外れてしまわないか」など、受給前後に多くの方が不安を感じるポイントです。
結論から言うと、失業保険は非課税です。
しかし、非課税だからといってすべての制度に影響が出ないわけではありません。
特に扶養や住民税非課税世帯の判定については、誤解しやすい点が多く注意が必要です。
本記事では、失業保険が非課税である根拠から、扶養・住民税・確定申告への影響までを整理し、制度全体を俯瞰できる「入口記事」として分かりやすく解説します。
失業保険の仕組みや受給までの全体像を先に整理したい方は、以下の記事で基本から確認しておくと安心です。

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失業保険は非課税?確定申告は必要?

結論から言うと、失業保険(雇用保険の基本手当)は非課税です。
失業保険は、所得税・住民税ともに課税されません。
これは雇用保険法第12条に「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない」と定められているためです。
そのため、失業保険をどれだけ受給しても、失業保険そのものに税金がかかることはありません。
それでも確定申告が関わってくるケース
失業保険が非課税であっても、確定申告と無関係になるわけではありません。
ただし「しなければならない場合」と「しないと損する場合」があり、この2つは性質がまったく違います。
申告が義務になる場合
副業やアルバイトなど、失業保険以外に課税される所得があるときです。
申告しないと、あとから追徴課税を受けるリスクがあります。
申告は任意だが、しないと損する場合
年の途中で退職し、年末調整を受けていないときです。
毎月の源泉徴収は「1年間働き続ける前提」で計算されているため、途中で辞めると所得税を納めすぎている状態になっていることがほとんどです。
この納めすぎた分は、翌年に確定申告をすれば還付を受けられます。
申告しなくても違反にはなりませんが、しなければ払いすぎた税金は戻ってきません。
この還付申告は、退職した年の翌年以降5年以内であればいつでもできます。
つまり重要なのは、「失業保険が非課税かどうか」ではなく、「他に課税される所得があるか」と「払いすぎた税金がないか」の2点です。
非課税でも影響する「扶養」|2種類の扶養制度に注意

失業保険は非課税と聞くと、「扶養にも影響しない」と思ってしまいがちです。
しかし実際には、扶養制度には2種類あり、見ているものがそもそも違います。
税法上の扶養(所得税)
- 管轄:税務署
- 判定基準:年間の合計所得58万円以下(給与収入なら123万円以下)
- 数える期間:1月から12月までの実績
税法上の扶養は「所得」を基準に判断されます。
失業保険は非課税所得のため、税法上は所得に含まれません。
そのため、失業保険以外に収入がなければ、配偶者控除や扶養控除の対象になる可能性があります。
健康保険上の扶養
- 管轄:健康保険組合・協会けんぽ
- 判定基準:年間収入130万円未満(60歳以上または障害のある方は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)
- 数える期間:申請した時点からこれから1年間の見込み
ここで注意すべきなのが、健康保険では失業保険も「収入」として扱われるという点です。
しかも、過去の実績ではなく、退職日の翌日から向こう1年間の見込みで判断されます。
さらに、同一世帯の場合は被保険者の年間収入の2分の1未満であることも必要です。
たとえ税法上の扶養に入れていても、失業保険の受給額によっては、健康保険の扶養から外れてしまうケースがあります。
「税法上の扶養に入れるか」と「健康保険の扶養に入れるか」は別物です。
失業保険を受給している場合は、必ず両方の基準を分けて確認することが重要です。
失業保険の日額はいくらまでなら扶養に入れる?

健康保険の扶養判定では、原則として年間収入130万円未満(60歳未満)という基準が用いられます。
ただし、失業保険を受給している場合は、年収換算ではなく日額ベースで判定される点が大きな特徴です。
扶養に入れる失業保険の日額の目安
失業保険(基本手当)の日額が3,612円未満であれば、健康保険の扶養に入れる目安とされています。
月額換算で約108,000円、年収換算で130万円未満となる水準です。
60歳以上または障害のある方は、日額5,000円未満が目安になります。
日額がこれ以上になる場合は、原則として健康保険の扶養には入れず、国民健康保険へ切り替える必要が生じます。
受給が始まるまでは扶養に入れます
見落とされがちですが、扶養から外れるのは給付が始まってからです。
流れは次のとおりです。
- 退職して扶養に入る
- 失業保険を申請、待期7日間 … 扶養のまま
- 給付制限期間(自己都合なら原則1か月)… 扶養のまま
- 給付開始。日額3,612円以上なら扶養から外れて国民健康保険へ
- 給付終了。再び扶養に戻る
自己都合退職なら1か月以上のあいだ扶養に入っていられます。
最初から国民健康保険に切り替えてしまうと、そのぶんの保険料が無駄になります。
「確定申告しなければバレない?」という誤解に注意
「失業保険は非課税だから、申告しなければ扶養に入っても分からないのでは?」と考える方もいますが、この認識は危険です。
健康保険の扶養認定では、雇用保険受給資格者証の提出を求められるなど、受給状況や日額が確認されます。
後から扶養条件を満たしていないことが判明すると、扶養から外れた日にさかのぼって次の対応が取られます。
- 健保が負担した医療費の返還請求
保険証を使って病院にかかっていた場合、健康保険組合が負担した7割分を返すことになります - 国民健康保険料の遡及発生
保険証がない期間の医療費は、いったん全額自己負担です - 国民年金の未納期間
60歳未満の配偶者は、第3号被保険者から外れます
返すのは保険料ではなく医療費なので、通院が多かった時期ほど負担が大きくなります。
「非課税=何をしても問題ない」と考えず、事前に日額を確認し、給付開始日から速やかに手続きを進めてください。
失業保険と住民税・住民税非課税世帯の関係

失業保険(基本手当)は、住民税の課税対象にはなりません。
そのため、失業保険を受給していること自体で住民税額が増えることはなく、住民税非課税世帯の判定にも含まれません。
住民税は前年の所得をもとに計算される仕組みのため、失業中であっても、前年に給与所得があれば住民税が課税されるケースはありますが、これは失業保険が原因ではありません。
住民税非課税世帯の判定
よくある誤解として「失業中だから住民税非課税世帯になる」と思われがちですが、失業中=自動的に非課税世帯になるわけではありません。
理由は3つあります。
① 判定は前年の所得で行われる
住民税非課税世帯かどうかは、前年1月から12月までの所得で判定されます。
今年収入が減っても、反映されるのは翌年度です。
今年失業した方が非課税世帯になるとしても、早くて翌年度からになります。
② 世帯全員が非課税である必要がある
住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税(均等割・所得割)を課税されていない世帯のことです。
本人が非課税でも、同一世帯に課税されている家族が1人でもいれば該当しません。
③ 所得の基準額を下回っている必要がある
1級地(東京23区など)の目安は次のとおりです。
- 扶養親族がいない人:前年の合計所得金額45万円以下(給与収入のみなら110万円以下)
- 扶養親族がいる人:「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円」以下
- 障害者・未成年者・ひとり親・寡婦:前年の合計所得金額135万円以下(給与収入のみなら204万4千円未満)
住民税非課税世帯かどうかは、各種給付金や減免制度、支援制度の利用可否に直結する重要なポイントです。
基準額は級地区分によって自治体ごとに異なるため、制度を利用する際は必ずお住まいの市区町村に確認してください。
自分が該当するかどうかは、市区町村で発行される課税証明書(非課税証明書)で確認できます。
失業保険以外にもある「非課税」の雇用保険給付

雇用保険の給付は、失業保険(基本手当)だけではありません。
実は、基本手当以外にも非課税として扱われる給付が複数存在します。
これらがまとめて非課税になるのは、冒頭で触れた雇用保険法第12条によるものです。
給付ごとに個別の規定があるわけではなく、雇用保険の失業等給付は一括して課税の対象外とされています。
代表的なものは、次のとおりです。
- 再就職手当
早期に再就職した場合に、失業保険の残日数に応じて一時金として支給される給付です。 - 就業促進定着手当
再就職後、一定期間働いたものの、賃金が前職より下がった場合に差額の一部を補填する制度です。 - 常用就職支度手当
残日数が3分の1未満の状態で再就職した場合の給付です。
ただし対象は45歳以上の方や、障害のある方など就職が困難な方に限られま。す。
ハローワークや職業紹介事業者の紹介による就職であることも要件です - 雇用保険の傷病手当
失業中に病気やケガで引き続き15日以上求職活動ができなくなった場合に支給される給付です。
14日以内であれば基本手当がそのまま支給されます。 - 育児休業給付金・介護休業給付金
育児休業や介護休業中の所得補償として支給される給付金です。 - 教育訓練給付金
再就職やスキルアップを目的とした訓練を受講した場合に支給される給付です。
なお、職業訓練受講給付金も非課税ですが、これは雇用保険の給付ではなく、求職者支援制度によるものです。
失業保険を受給できない方が職業訓練を受ける際に支給される制度なので、上の6つとは対象者が異なります。
このように、雇用保険の給付は多くが非課税として扱われます。
ただし、非課税であっても扶養判定や各種制度の対象可否に影響するケースがあるため、「税金がかからない=何も影響しない」と考えず、制度ごとの扱いを確認することが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q. 失業保険を受け取ると確定申告は必要ですか?
A. 原則として、失業保険(基本手当)だけであれば確定申告は不要です。
失業保険は非課税所得のため、受給そのものが申告義務を生じさせることはありません。
ただし、退職前の給与で年末調整を受けていない場合や、副業など他の課税所得がある場合は、確定申告が必要になることがあります。
関連記事:途中退職した年は確定申告が必要?年末調整との違いもわかりやすく解説
Q. 健康保険の扶養に入れますか?
A. 失業保険の受給額によっては、扶養に入れない場合があります。
健康保険上の扶養は年収130万円未満が基準で、失業保険は日額換算で判断されます。
一般的に、基本手当の日額が3,612円未満であれば扶養に入れる可能性があります。
関連記事:失業保険と扶養、どっちが得?両立できる条件と損しないタイミングを解説
Q. 配偶者控除は受けられますか?
A. 条件を満たせば受けられる可能性があります。
配偶者控除は所得ベースで判定され、失業保険は非課税のため所得に含まれません。
他に所得がなければ、控除の対象となることがあります。
Q. 非課税世帯になりますか?
A. 失業中であっても、必ず非課税世帯になるとは限りません。
住民税非課税世帯の判定は、前年の所得や世帯全体の状況をもとに行われます。
詳細は市区町村での確認が必要です。
関連記事:退職して住民税が払えないときはどうする?減免・分割・放置リスクまで徹底解説
Q. 再就職手当も非課税ですか?
A. はい、非課税です。
再就職手当は雇用保険法に基づく給付で、所得税・住民税はかかりません。
関連記事:再就職手当(就職祝い金)とは? 受給条件と申請手続きの全て|早く働いた方が得?
Q. 失業保険をもらいながらアルバイトをしても問題ないですか?
A. 条件を守れば可能ですが、必ず申告が必要です。
短時間のアルバイト自体は禁止されていませんが、働いた日は必ずハローワークに申告する必要があります。
無申告で働くと、不正受給と判断されるリスクがあります。
関連記事:失業保険(失業手当)受給中のバイトはOK?おすすめのバイトもあわせて紹介!
まとめ|非課税でも制度の影響はゼロではない
失業保険(基本手当)は、所得税・住民税ともに非課税です。
そのため、「税金がかかるのかどうか」という点だけを見ると、安心できる制度といえます。
一方で、健康保険の扶養判定や住民税非課税世帯の扱いなど、税金とは別の制度では、失業保険が「収入」として影響する場面があることも事実です。
「非課税だから大丈夫」と自己判断してしまうと、後から扶養を外されたり、想定外の保険料が発生したりするケースもあります。
社会保険給付金アシストでは、失業保険の受給だけでなく、退職後の保険の選び方や、国民健康保険料の減免制度についても状況に応じてご案内しています。
「自分の場合、どの制度が使えるのか分からない」
「保険料をできるだけ抑えたい」
そんな方は、お気軽にご相談ください。
