傷病手当金を申請するには、医師の証明だけでなく「事業主の証明」も必要になります。
しかし、中には会社が書類を書いてくれず、申請手続きが進まないというケースもあります。
本記事では、会社が協力してくれないときの理由や背景、そしてその場合に取るべき具体的な対処法を詳しく解説します。
目次
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傷病手当金の申請に会社の協力が必要な理由
傷病手当金の申請書には、「事業主記入欄」が存在します。
今回は、協会けんぽの申請書3ページ目、「事業主記入用」のページを見ていきましょう。

このページでは、以下のような情報が求められます。
- 出勤状況
- 最終出勤日
- 給与の支給状況(有給休暇の取得など)
- 勤務先情報
これらは被保険者本人が証明できる内容ではなく、事業主が記入・証明する必要があります。
このため、会社の協力が不可欠なのです。
会社が書類を拒否・放置するのはどんなケースか
傷病手当金の申請には、会社が作成・記入する「事業主記入欄」の記載が必要不可欠です。
しかし、実際には会社がこれを拒否したり、放置したりするケースも少なくありません。
たとえば以下のような理由が挙げられます。
- 「自己都合退職者だから対応しない」
- 「前例がない」「書き方がわからない」
- 「会社として対応しない方針」
- 担当者が不在、または放置している
- 故意に妨害している(ハラスメントの一環)
多くの場合は、会社側の制度に対する知識不足や、「余計な手間をかけたくない」という心理が背景にあります。
そもそも会社が拒否するのは違法なのか?
結論から言えば、会社が傷病手当金の書類記入を拒否することは、法的に問題となる可能性があります。
というのも、健康保険法第104条には、事業主が「保険者への届出その他保険給付に関する事務に協力しなければならない」と明記されています。
つまり、申請に必要な書類の作成を一方的に拒否することは、法令違反に該当する可能性があるのです。
さらに、労働契約上の信義則違反(信頼関係を損なう行為)として、会社側が民事的な責任を問われる余地もあります。
ただし、現行法では明確な罰則が設けられていないため、実際の対応としては「行政指導」や「是正勧告」にとどまるケースが多いのが現状です。
それでも、「違法の可能性がある行為であること」を伝えることで、会社側の対応が変わることもあります。
次の章では、拒否された際にどのように対処すべきかを解説します。
拒否されたときの正しい対処法
会社に傷病手当金の申請書類の記入を拒否された場合、感情的にならず、冷静に対応することが重要です。
以下に、適切な対処法を段階的に紹介します。
- 丁寧な依頼文を作成し、メールまたは書面で依頼する
まずは、担当者宛に丁寧な依頼文を書面またはメールで送付しましょう。
メールの場合は送信履歴が証拠になりますし、書面は内容証明郵便にすることで後のトラブル防止にも役立ちます。
「〇日までにご対応いただけますと幸いです」など、明確な期日を提示することも効果的です。 - 担当者では話が進まない場合、社長宛に文書で正式依頼
中小企業や家族経営の会社では、社長が実質的な窓口になっていることも少なくありません。
担当者とのやり取りで進展がない場合は、社長宛に正式な文書で依頼してみましょう。
この時も冷静で丁寧な文面を心がけましょう。 - 健康保険組合や協会けんぽに相談
書類を記入してもらえない状況を、保険者(健康保険組合や協会けんぽ)に直接相談する方法もあります。
協会けんぽや健康保険組合に事情を説明すれば、会社へ協力依頼の書面を送ってくれたり、申立書という形式で本人からの申請を受け付けてくれる場合もあります。
申立書には給与明細や離職票などの客観的資料を添付することで、会社の協力がなくても審査が進められるケースがあります。
健保によって対応方針が異なるため、まずはご自身の加入先の保険者に相談してみることが大切です。 - 労働基準監督署に相談・通報する
労働基準監督署(労基署)に相談することで、行政から会社に対して是正指導が行われる可能性があります。
ただし、労基署には傷病手当金そのものを強制させる権限はありませんので、あくまで会社の「協力義務違反」への是正を目的とした対応になります。 - 社労士・弁護士など専門家に相談する
状況が深刻、あるいは会社との関係が悪化している場合は、社会保険労務士や弁護士など専門家に相談することを検討しましょう。
費用はかかりますが、法的な対応や第三者からの指導により、会社の態度が変わるケースもあります。
いずれの方法でも、冷静・丁寧に記録を残しながら進めることが、トラブル解決の鍵となります。
なお、弊社でもこうした書類拒否トラブルに直面した方へ、状況に応じた適切な対処法のアドバイスも行っています。
特殊ケースへの対応
会社から書類の作成を拒否された場合でも、状況に応じた対応策があります。
以下はよくある特殊ケースとその対処法です。
ケース1:会社が倒産・廃業して連絡が取れない場合
会社がすでに倒産・廃業しており連絡が取れない場合でも、給与明細や雇用契約書、シフト表、勤務実績のわかる資料をもとに、健康保険組合または協会けんぽに相談することで、申請が認められる可能性があります。
ケース2:退職後で「もう関係ない」と言われた場合
退職後に「もう関係ない」と対応を拒まれることもありますが、在職中の勤務実績については、退職後であっても会社には記載義務があります。
一度断られても諦めず、改めて正式な依頼書を提出するなど、粘り強く対応を求めましょう。
ケース3:虚偽の内容が書かれていた場合
作成された書類に虚偽の記載(例:出勤していないと記載されている等)があった場合は、健康保険組合に事情を説明し、正しい情報をもとに訂正申請を行うことが可能です。
この際、給与明細や勤怠記録など客観的な証拠を添えることが重要です。
拒否されても間に合う?申請期限と時効について
傷病手当金には時効があり、原則として支給対象となる各月の翌日から2年以内に申請しないと、その月の分は受け取れなくなります(健康保険法第193条)。
つまり、会社の協力が得られず申請が遅れてしまうと、それだけで一部の月が時効消滅してしまうリスクがあります。
しかし裏を返せば、「2年以内」であればたとえ退職から数ヶ月〜1年近く経っていても申請できる可能性があるということです。
諦めて放置してしまうとその時点で権利を失いますが、期限内であれば会社に再度依頼したり、健保に相談したりして粘り強く進める価値があります。
※ただし、初診日や勤務実績の証明が難しい場合は別途証拠が必要になるため、なるべく早い段階での行動が重要です。
実際に書類を書いてもらえた成功例
弊社のサポートをご利用いただいた方の中に、退職後に傷病手当金の申請を進めようとしたところ、会社から「退職者の書類は対応できない」「書き方がわからない」と拒否されたというケースがありました。
弊社では、会社側が安心して対応できるよう、書類作成の目的や法的根拠、記入方法などを分かりやすくまとめた依頼文のひな形をご提供し、メール文の添削もサポートしました。
その結果、会社側も「そういう事情なら対応すべきだと理解した」と姿勢を改め、無事に必要書類を作成。申請もスムーズに進み、給付が認められたという成功例となりました。
このように、会社の拒否には「無理解」や「手続きへの不安」が背景にあることも多く、丁寧な説明と冷静な働きかけで状況が好転するケースも少なくありません。
あきらめずに、正しい手順で対応することが何より大切です。
相談時のポイントと注意点
会社や関係機関に対して相談・依頼を行う際は、伝え方や姿勢が非常に重要です。
スムーズに解決へ向かうためには、以下のポイントを意識しましょう。
-
感情的にならず、冷静かつ丁寧に依頼する
不満や怒りがあっても、冷静に事実を伝える姿勢が大切です。
強い言葉や攻撃的な態度は、相手の協力を得にくくする原因になります。 -
メールや録音など、やり取りの証拠を残す
メールでの依頼や、電話の録音(可能な範囲で)など、後から確認できる記録を残しておくことで、万一トラブルが長引いた場合の証拠になります。 -
健康保険組合や労働基準監督署には、第三者として中立的に事情を伝える
感情的な訴えではなく、経緯や現在の状況を整理して伝えることで、より適切な対応を引き出しやすくなります。
なお、「脅す」「怒鳴る」といった強硬な手段は、逆効果になることが多いため避けましょう。
丁寧で冷静な対応こそが、状況を打開する鍵となります。
よくある質問(FAQ)
Q. 書類作成を拒否するのは違法ではないのですか?
A. 健康保険法第104条により、事業主には協力義務があります。
明確な罰則はありませんが、法令違反となる可能性があります。
Q. 書類作成を拒否された場合でも、傷病手当金を申請できますか?
A. 書類がなければ通常の申請はできませんが、健保組合に相談すれば代替措置が取られることもあります。
Q. 在職中ですが、会社に申請書類の作成を頼みにくいです。どうすれば?
A. 労務担当者や上司ではなく、可能であれば総務・人事部門へ直接丁寧に依頼しましょう。
メールでの依頼が無難です。
Q. 書面で依頼するときに注意すべきポイントは?
A. 感情的にならず、冷静かつ丁寧に要点をまとめ、期限も明記しましょう。
やり取りはすべて記録に残すのが基本です。
Q. 書類を依頼する際に「書き方がわからない」と言われました。どう対処すべき?
A. 健保の記入マニュアルを添付したり、記載見本を渡して「必要な箇所だけ記載していただければ大丈夫です」と補足すると対応されやすくなります。
Q. 退職直後で傷病手当金を受ける予定ですが、在職中の証明が必要ですか?
A. はい、在職中の勤務状況や給与の証明が必要になります。
退職前に書類をそろえておくのが望ましいですが、後日依頼することも可能です。
まとめ
傷病手当金の申請には、会社側の協力が不可欠です。
たとえ拒否されたとしても、適切な段階を踏んで対応すれば、多くのケースで申請をあきらめずに済みます。
感情的にならず冷静に、丁寧な手続きを重ねていくことが重要です。
どうしても前に進まない場合は、専門家の力を借りることも検討しましょう。
確実に受給へつなげるためにも、状況に応じた最善の対応をとってください。
弊社では、こうしたトラブルへの具体的な対処方法や、申請成功に向けた個別サポートも行っています。
ひとりで悩まず、ぜひ私たちのサポートをご活用ください。